植え戻し活動はどうして危険なの?

 現在の日本のラン植物の多くは、園芸的な需要による採取をはじめとし、開発行為による、自生地の破壊、さらには里山の荒廃などにより失われつつあります、近年野生ランの人工繁殖技術が普及したこともあり、人工増殖苗を植え戻すことにより自生地を復元する試みが行われるようになりました。しかし、植え戻し活動には、その地域の自生地を修復不可能で壊滅的な状態にしてしまう危険を伴うことは意外と知られていません。

生物学的危険を回避する
このような危険性を回避するために、安易な人工繁殖株の植え戻しは避けるべきです。植え戻しを行う際には、対象となる植物の特性や絶滅の危険性の程度等を総合的に検討する必要があります。植え戻しが必要であると判断された場合は、安全でかつ効果的な戦略を策定した上で実施しなければなりません。 そのためには、分類学や個体群生態学、園芸学、植物病理学など様々な分野の専門的な知識が不可欠であり、人工繁殖株を用いてラン科植物の自生地の復元を計画される場合には、ラン科植物の専門家からの体系的な助言を受けられることが必要です。 以上の理由から、植え戻し植え戻しを計画される場合には、このガイドラインを参考にしてください。 また、実際に植え戻しを計画、実行されているケースがありましたら、実態の把握と、今後の参考資料といたしますので、その内容をお知らせ下さい。

植え戻しにおける主な問題点

・遺伝子レベルの撹乱→植え戻しを行う植物は、植え戻し予定地に以前自生していた種・系統であることが原則です。
 地域集団(個体群)は、個々に異なる歴史背景をもち、遺伝的分化を遂げつつあります。他地域の植物・系統を植え戻すことは集団本来の姿を損なうこととなり、自然環境の保全とそう反する行為となります。従って、園芸的観点から選別された個体である園芸品種や由来の不明な植物を植え戻すことは絶対に避けなければなりません。
・病原体の持込→ウイルスやその他の病原菌に汚染された個体の植え戻しは絶対に行わない。
 ウイルスやその他の病原菌に罹病した個体を自生地に導入することは、自生地への病気の蔓延を引き起こし、最悪の場合には自生地に残存する個体の絶滅を引き起こします。

 このような危険性を回避するために、安易な人工繁殖株の植え戻しは避けるべきです。植え戻しを行う際には、対象となる植物の特性や絶滅の危険性の程度等を総合的に検討する必要があり、植え戻しが必要であると判断された場合は安全で効果的戦略を策定したうえで実施しなければなりません。そのためには、分類学や個体群生態学、園芸学、植物病理学など様々な分野の専門的な知識が不可欠であり、人工繁殖株を用いてラン科植物の自生地の復元を考える場合には、ラン科植物の専門家からの体系的な助言を受けられることが必要です。